続・六畳間奮闘記

男には自分の世界がある。例えるなら空をかける、ひとすじの流れ星

ライトノベルとは

 
 ーライトノベルーと聞いて、あなたはどう思うだろうか?おそらくだが、多くの人々はこう思うのだろう。「子供だまし」「スカスカな内容」「オタク文化の象徴」、と。いや、それが間違っていると言いたいわけではない。むしろその認識で合っていると僕も思う。自分自身、何度作家の文章力や構成力のなさに絶望したかわからない。こんな文章で金をとるな!、と。
 だが、それがすべてではないのだ。ライトノベルは、ロードス島戦記に始まって以来多くの金字塔を打ち建ててきた。スレイヤーズ涼宮ハルヒ円環少女等々いずれも世に恥じることのないれっきとした名作・傑作たちである。今回はそんな中から、僕の思い入れ深い作品と共に六畳間以前のライトノベル史を振り返ってみようと思う。・・・とは言っても以降はないわけだが

 すべての始まりは「覇者の三剣(トリスアギオン)」という作品だった。初めて出会った作品がこれだったからこそ、僕はあんなにもラノベにのめり込んでいたのだと今は思う。5巻完結のこの作品には、ダークファンタジーに必要なものがそろっていた。血と絆のソードアクション。神より与えられし、「魂源」へと至る可能性のかけらーー「神理の欠片(エクストラ)」という特殊能力(ちから)。
これは設定の一つである駆身・識身のレベルが共に6に達したとき発言する能力で、それぞれがオンリーワンの属性と能力を持っている(正確には神理の欠片が目覚めると人の肉体は初めて限界の壁を越えレベル6に到達することができる)。他にも異世界からの侵略者に対抗するために作られた"壁に覆われた街"武街や、"真紅の斬線(デットライン)"”共鳴の刹那(エクシードカウンター)”をはじめとした能力名などにもセンスが光る。全体的に面白いが、特に要(人名)の見せ場である「マキシマムドSモード」や「天剣の剣守り」とのリベンジマッチは、血沸き肉躍る前に冷え固まったくらいにえげつなくも面白いものだった。たぶん今読んでも面白いくらいに、完成度の高い作品である。22年の人生で読んでる人を見かけたことがないくらいマイナーでもあるが・・・

 ライトノベルの法則として、回を追うごとに面白くなくなる、というものがある。例えば魔法科高校の劣等生やSAOなどはその代表格だろう。序盤は次巻の発売が待ちきれないほどなのだが、中盤からだれてくるのである。これを10巻の壁と(僕は)いい、ここが今後も読み続けるかどうかの大きなターニングポイントとなる。逆に、長編作品でこの壁を越えた作品は大体が良いエンドを迎える。鋼殻のレギオスしかり、狼と香辛料しかりである。ベン・トーなどは腹筋がねじ切れるほど面白かったが、ラストがビミョーだったので割愛だが・・・
 次に紹介する「氷結境界のエデン」は、その壁を越えて大気圏へ突入してしまった成功例だ。作家としての地力の高さがうかがえる(これまた隠れた)名作である。正直、この記事はこの作品のために書いているといっても過言ではない。

 「氷結境界のエデン」は割と序盤に出会った作品で、「火の国風の国物語」という作品に入っていたチラシで見つけた。たしか4作品目にそろえ始めた、割と初期の思い出深い作品である。
 この作者のことは「黄昏色の詠使い」で知っていたのだが、そろえたのはエデンからである。なぜなら・・・気になる単語が多すぎる!
 
 魔笛」という力を持つ謎の存在「幽幻種」という脅威が存在する世界。人々が生きることができる地は、巫女の祈りによってなる「氷結鏡界」に守られる「浮遊大陸オービエ・クレア」のみであった。
  オービエ・クレア第二居住区の喫茶店に居候する少年シェルティスは、かつて天結宮(ソフィア)で氷結鏡界を守る巫女のために護士として双剣を振るっていた。しかし、とある任務中の事故で浮遊大陸から穢歌の庭へ落下、誰もが彼の死亡を確信した。  
 だが1年後、彼は浮遊大陸へ奇跡の生還を果たす。その身に、魔笛を宿して。

 このあらすじで購入を決めた。・・・いや、もうね、巫女が祈る結界の名前が「氷結鏡界」って時点で持ってかれたよね、心が。
 さらりと触れているが、主人公が所属していた組織もポイントが高い。巫女は、「天結宮(ソフィア)」の293階で氷結鏡界の維持に努めているわけだが、この巫女を守るのがソフィアの護士であり、主人公だ。護士にも階級があって、護士見習いに始まり、正護士、錬護士、千年獅と階級が上がっていく。みんなバケモンみたいな強さなのだが、特に錬護士以上は凄まじいの一言に尽きる。そのすさまじさを感じさせる描写がこれだ「---水たまりに剣を突き立てる・・・そこに波紋は立たなかった」剣技の精緻さを表現するためにこの描写を用いるあたり、作者のセンスを感じる。僕の背筋には鳥肌が立った。詠唱に用いられる「セラフェノ音語」という架空の特殊言語もカッコよい。
 この幻想的な重奏世界で繰り広げられる、シェルティスとユミィの物語・・・この作品でしか味わえない読後感が君を待っている!ということで、みなさん買ってみてください。僕と感想を語り合いましょう。おすすめ!


最後は、僕の大好きなキャラである錬護士筆頭の槍使い、イシュタルさんの名シーンで締めたいと思う。

と、思ったのだが、本が手元にないのでごめん。「始祖伝承槍術。階位【至高の到達者(ジルシュヴェッサー)】」しか覚えてなかった・・・また今度更新するね!