続・六畳間奮闘記

男には自分の世界がある。例えるなら空をかける、ひとすじの流れ星

ㇵ行三段腹活用

 温泉には様々な人々が集まる。それに伴い浴場が腹の展覧会ともいうべき様相を呈するのは、ごく自然なことであろう。あの腹は膨れ上がり、その腹は落ちくぼみ、この腹は段状に重なりあって、肉のカスタネットとでもいうべき見事な三段腹を形成している、という具合である。

 ところで、そこにある腹はどのようにしてそこにあるのだろうか?自分は疑問を持った。それは「プリンッ」としているのか、「ブリん」としているのか、はたまた「ぽよよん」、「ボロンっ」としているのか・・・。これは問題である。ある人が、「あの腹はプルンとしていたよ」と言ったときに、「いや、アレはブルンだ!ブルンに違いない!」という人がいたらどうすればいいのだろう?表現を巡ってのいざこざは大変である。何しろ、そのある人の感性がかかっているのだから。これはいけない。

 よって、腹をその状態ごとに呼び分ける統一的な擬態語を作ることにした。まず初めに状態の定義を行う。腹には無段→1段→2段→3段と来ると、再び集合して1段に戻る性質がある。これは、度重なる観察によりわかってきた事実であり、この2週目の1段を厚1段と呼ぶことにする。そして三段から厚1段となるときには、腹は「ぼろんッ」と変形するので、これをボロン変形と呼称する。
 無段腹に音はない。そこにはただ静寂のみがある。1段でぷりん、2段でぷりりん、3段でポロロン、となる。これがボロン変形を経ると、1段でぼよん、2段でぼよよん、3段でブヨヨン、に変わる。厚の段を超えた人物は剛の者と言い、彼ら彼女らを形容する言葉に段階はなくなる。一律で「ドポン」。ただ、それだけで十分だ。

 まとめると、「始まりに静寂、ぷりん、ぷりりん、ポロロン。ボロン変形を経て、ぼよん、ぼよよん、ブヨヨン。終わりはいつもドポン」となる。これをハ行三段腹活用と称することにした。この表現が広まれば、争いの種が一つ減ることになるだろう。さしあたって、近くの温泉にこれを表にしたものを持っていったらよいのではないかと思う。皆さんも、もし温泉で見かけることがあったら是非確認してほしい。自分が何腹であるのかを・・・。