続・六畳間奮闘記

男には自分の世界がある。例えるなら空をかける、ひとすじの流れ星

インターステラー ☆彡

作品『インターステラー』(2014) 監督:クリストファーノーラン

 

今日は遅まきながら「インターステラー」をみた。

ストーリーを一言でいうと、砂漠化による食糧危機により地球がダメになったので別の星に移る…というもの。この映画は、インターステラー=惑星間飛行による時差を盛り込み、時空を超えた愛の一大スペクタクル巨編として作品を仕上げているところがすごい!!

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主人公:ジョセフ

主人公の娘:マーフィー

搭乗員のヒロイン:アメリ

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***考察していますがあくまで感想です( ´∀` )あとネタバレ注意‼***

~序章~

 太陽系第6惑星・土星において、ワームホールが発生した。この重力異常により、地球では砂漠化が進行し、人類は未来を閉ざしていた。そんな中、NASAはこのワームホールを利用して別の銀河へ探査船を送り、「ミラー」「マンの星」「エドマンズの星」という3つの可能性を手にしていた。ここから主人公の冒険が始まる。

この作品のキーワードは、ずばり「マーフィーの法則」。引き寄せの法則として有名だが、作中では「あるものはある。起こりうる可能性のある事象は発生する」というような意味合いで使われる。主人公の娘はその「マーフィー」の名の示す通り、あらゆる可能性が収束する天才である。

作中では、不思議な事象が発生する。マーフィーの部屋の本棚から本が落ちたり、砂がへんてこな線を描いたり…この謎とマーフィーを含む家族を残してジョセフ一行は宇宙へ旅立つ。その道程で一行は幾度かの選択をし、謎は作品終盤で回収される。

~第1章~

まずは冬眠を繰り返し最初の惑星ミラーにたどり着くが、ここで発生した大津波により第一の選択が行われた。探査船のデータを優先する(アメリア主張)か、乗員の命や時間(ジョセフ主張)を優先するか。結果として、ここではジョセフが正解だった。なぜなら、この星では人類は生存できないことがのちにわかったからである。

~第2章~

そして第2の選択は、母船の燃料不足により行われた。「マンの星」と「エドマンズの星」どちらに行くのか。ジョセフは探査計画のリーダーであり信号も出しているマンの星、アメリアはエドマンズの星を推した。作中では、アメリアの「エドマンズの愛を感じるから」という主張  "ここは科学などの理論ではなく愛の力を信じるべきではないか"  というものを、ジョセフが一蹴する形で「マンの星」へ向かう。物語はここから終盤へ向けて加速していくが、結果としては「エドマンズの星」が目的の星であり、アメリアが正解だった。

~第3章~

マンの星では、一行はマンの裏切りにより「マンの星脱出」が困難になる。差し迫った状況の中、ジョセフがブラックホールに落ち、アメリアが「エドマンズの星」へ向かうことになる。以降、ジョセフ視点で物語が進むが、ここでマンはのちのヒントになる言葉を口にする。「父親は死の間際、娘を思いだす。お前は今娘を思い出しているか」と。ここでジョセフは死にかけなかったので思い出してはいない。

~第4章~

ブラックホールに落ちた後、ジョセフは死にかけ、娘を思い出す。すると不思議な四次元空間に放り込まれる。ジョセフはそこが我が家の本棚の裏であり、本を落としていた幽霊は自分だと悟る。ちなみに、この四次元空間はおそらくブラックホールの中だ。事象地平線(イベントホライズン)を超えると、時間と空間は逆転する。通常空間では観測時間において空間が無限に広がっているが、事象の地平線を超えると、一つの空間において過去から未来までの時間が連続するようになる。そういう描写だった。ここで、死ぬ間際娘を思い出したジョセフの観測は地球のマーフィーの本棚に固定され、その空間における時間旅行が可能になった。この固定は量子力学的な観測による固定によるものか、あるいは…。

ここで伏線回収がされると同時に、本作のメッセージが完成する。ジョセフは、特異点データを伝えるためにマーフィーへの愛を想い、その愛が引き寄せる力によって該当の時間を発見し、データを伝える。これは愛の力学的作用を示す描写であると思う。つまり、時空を超越する、重力に続く第2要素「愛の力」が実証された瞬間である。ここから第2選択でのアメリアにつながり、「エドウィンとの愛の力を感じるから、エドウィンの星が正解」という一蹴された理由に理論的な根拠がつくようになる。

つまり、この作品にはストーリーからのアンチテーゼ(反証)による「愛の実在証明」というテーマが隠れている。第2の選択を誤ったジョセフが、最終的には愛の力で重力理論のキーポイントを伝えること、愛の力で第2選択を行えば他の搭乗員の犠牲はなかったことがこれを裏付ける。(…アメリカ人はこういうロマンチックなの大好きだよね。僕も好きだけどw)

~終章~

この後、ジョセフはブラックホールを通り抜けワームホール付近で漂っているところを、アメリアの連絡を受け出発していたコロニー移民船団に拾われ目が覚める。本来、ブラックホールを宇宙服で通り抜けるのは不可能(星が角砂糖サイズになる重力)なのだが、そこは5次元存在により保護されたとみるのが妥当だろう。こいつらが本作のメインSFガジェット。SFとは現実に即したフィクションであり、現実的でない現象をどのように理詰めで説明するかというのが一つの楽しみなのだが、それにはどこかで"ぼかし"というべき、リアルとフィクションの境界が生じる。本作ではそれを埋めるのが例の5次元存在であり、いわば彼らが本作における事象の地平線なのだ‼

 

最後に。例の4次元空間でのやり取りに関する解釈をどうするか、少し悩んだ。作中では5次元存在がジョセフたちを導いたというが、その幽霊の正体はジョセフ自身だった。しかし、それでは物語にタイムパラドックスが生じる。鶏が先か卵が先か、最初に本棚を落としたのは誰なのか。このようなケースでは、主人公の判断に未来の自分が直接かかわってはいけないのだ。その未来に自力で到達し、過去を改変するならばokだが、未来への到達に未来自身は関係することはできない。タイムパラドックス残ってるんでない?

しかし、ここも大変便利なマーフィーの法則を作用させられる。もし、ジョセフが未来へ到達する可能性をマーフィー自身が引き寄せたとするならば…ある意味、重力特異点ならぬ可能性特異点「マーフィー」の誕生である。だって、普通本棚から本が落ちたり針の秒針が振動したからって気付くわけないやん‼

物語は完結し、最終的には移民成功。アメリアのもとへジョセフは旅立つ。彼ら彼女らの時空を超えた旅路の果てに迎えた新天地が幸福なものとなることを願い、終わりにする。

 

追記:物語の謎に夢中で自分より年上の娘の死に目に立ち会う辛さとか、登場人物に感情移入できてなかった…。素直に楽しめばよかった気がしなくもない。Σ( ̄ロ ̄lll)